2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

芸術に救われたこと

大学時代に、失恋をした。自分の感覚では、ある男に彼女を横から「かっ掠われた」ような感じだった。その後は、失意の日々が続いた。惨めな敗北感に打ちのめされ、生きている意味を見出せなかった。今なら、たかが失恋じゃないか、なのだが、当時はそんな気…

音楽の愉しみ 2

バッハの平均律第2巻の第20番フーガを聴くと、私は必ずベートーヴェンのピアノソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」の終楽章を思い出す。曲想が似ていると感じるからだ。私の勝手な想像だが、ベートーヴェンはこの曲(No.29)を作る際に、バッハのこの曲を参…

音楽の愉しみ

私が日常的に聴く音楽は、西洋古典音楽とロック、特にヘビーメタルである。両者は対極的な位置にあるように見えるが、私にとっては共通性がある。それは、感傷性を排した音楽であること。センチメンタルな、お涙頂戴音楽は、避けて通る。単なる絶叫調も、ダ…

人生の愉しみ

生きていて良かったと思える瞬間は数多い。結婚して娘が生まれた日のことは今でも昨日のことのように覚えているし、その娘に孫たちが産まれて、私の人生はさらに「良く」なった。 私の今の切なる願いは、孫たちが大きくなった頃に、幾らかでもマシな世の中に…

生の意味

以前に、生きていることには意味があるが、死に意味はないし、意図的な「死の意味づけ」には危険な面さえあると書いた。では「生きている意味とは」何だろうか? これに似た問いとして「何のために生きている?」がある。これは最近のNHKで「哲学的街頭イン…

ショックドクトリン

「堤未果のショック・ドクトリン」という本を読んだ。時宜を得た、よい本だと思う。全3章だが、半分くらいは第1章の「マイナンバーという国民監視テク」に充てられている。今、盛んに問題になっている「マイナンバー」関連の記述だ。世界各国の事情なども具…

前回の続き

死は経験することができないから、常に「他人事」だ。死にかけてこの世に戻ってきた人も少数はいるが、完全に「あの世」に行って戻ってきた人はいない。つまり誰にとっても、死は初体験だから、予め練習することはできない。いつでも「ぶっつけ本番」で、し…

やがて来るものとのつき合い方

70歳近くともなれば、自分の寿命も残り少ないことを、現実の事態として受け止めざるを得なくなる。怖がっても抗っても、来るものは来る。逃げようはない。一緒に産まれてきた双子の片割れは、15年も前に死んでしまった。彼は死ぬ間際、何を考えたんだろう・…

老人初心者の感慨

先週、69歳になった。あと1年で70だ。傍目には立派な「老人」のはずだが、自分ではそんな気がしない。既に3年前に65歳で定年退職した時に「高齢者」の仲間入りをし、今は人工透析に週3日費やす身なのだから、あれこれの身体的制約が大きいのは事実であるのだ…

私の立場さしあたり

表題は、「加藤周一著作集」第15巻の最後に置かれた文章のものである。加藤周一は、中年期まで私の読書生活の中心だった。きっかけは、高校2年の国語教科書で「日本の庭」という作品に触れ、その明晰な文章に惹かれたことだった(後に原版を読んで、一部が削…

亡き兄のこと

急死した兄の葬儀には400人もの会葬者が訪れ、会場の教会には入りきらず外まで長い行列が続いた。一般人の葬儀としては、異例の大人数だったと思う。その多くは、彼の診た患者とその家族で、小児外科医として如何に彼が頼りにされ慕われていたかを示すものだ…