マスコミの「タブー」はまだある

3月19日に森永卓郎氏の最新刊について述べたが、森永氏の挙げた三つの他に、マスコミがタブーとしている話題がまだ幾つかあると思う。私の見立てでは1)地球温暖化・脱炭素批判、2)原発放射能関連、3)リニア新幹線批判、4)宇宙開発批判の4つは、大手マスコミにはほぼ決して載らない話題、つまりタブーになってる。

1)については、以前に書き、今後も続けて書くので今回は略す。「炭素クレジット利用はグリーンウォッシュだ」(https://agora-web.jp/archives/240319220715.html)は、確かに正しいが、それ以前に「脱炭素はグリーンウオッシュだ!」と言うべきなのだ。何しろ、科学的根拠がないのに、あたかも本当で有意義であるかのようにみせかけているのだから。

2)原発放射能関連:福島事故の後、燃料デブリの取り出しに苦戦し廃炉が予定通り進んでいないことは報道されマスコミでも批判されたりすることはあるので、原発関連が全部タブー化されているとは思わない。しかし、一般市民が知ったら色々と不都合だろうと思われる情報は、慎重に、できるだけ表に出ないよう「配慮」されていると思う。

例えば、先日放送されたTBS「報道特集」で、志賀原発に入った村瀬キャスターが言うには、カメラの方向が厳しく管理されていて、特定の方向にしか向けられないとのこと。実際、カメラ1台に複数の職員が張り付いていて、カメラの撮影方向を厳しく管理していた。まるで軍事基地の撮影みたいに。これを察するに、放映されたらよほど「ヤバイ」映像があるんだろうな、と言うことだ。ネット等では「志賀原発は全然大丈夫、危険を煽る報道には喝!」などの勇ましい文言が飛び交っているが、本当に大丈夫ならば、どこを撮影されたって良いんじゃないの?と聞きたいくらいだ。

また、放射線被曝評価に関しても、国際原子力機関(IAEA)などが出す評価は一般に甘く、他の科学者たちが主張する危険度の方が厳しいと言う事実があるが、マスコミには「権威ある」IAEAの知見しか紹介されない。特に、身体の外部からの放射と、体内での内部被ばくでは危険度は桁違いなのに、その区別も明確に報道されていない。典型的なのは、例の海水放出された水に含まれるトリチウムの毒性だ。確かに、トリチウムの出すβ線は、紙1枚で遮れるほど弱い放射線だ。かつ、1ベクレル当りの健康影響はセシウム137の約1/700に過ぎないということで、食品の基準値の規制対象に含まれていない。また、生物濃縮もしない。しかし、体内に取り込まれた場合には、細胞レベルの近距離でβ線照射を受けるので、DNAなどの損傷が著しい。つまり毒性がものすごく高い。だから、トリチウムは極力、体内に入れてはならない物質だ。東電や国、また大手マスコミや御用学者たちは、この点を言わない。

3)リニア新幹線関連:ネットを探れば、リニア新幹線に関する問題点の指摘は山ほど出ており、もはや出尽くした観がある一方で、大手マスコミにはこの問題点を指摘する声がほぼ全く見られない。沿線自治体をはじめ、ひたすら、全線開通あるのみ、なのだ。工事が進まないのは、静岡県知事がダダをこねているからだと言わんばかりの印象操作が目立つ。しかし、事実はそんなに単純ではない。実際には、水資源の確保や残土の置き場、品川や名古屋の都市部における大深度工事、南アルプスのトンネル工事その他、難題が種々立ちはだかっていて、進んでいないのだ。中でも、水資源の確保は難しそうだ。

実例として、丹那トンネルの例がある。このトンネル1本で、丹那盆地の水は全部枯れてしまい、稲作やワサビ栽培が出来なくなった。当時の国鉄、今のJRは、丹那盆地の住民に多額の賠償金を払っている。しかし枯れた水資源は戻ってこない。また山梨のリニア実験線の沿線でも水涸れは起こっているから、静岡工区での大井川水源が涸れる心配は当然起こる。その対策として、田代ダムの取水を止めて、工事で失われた分を補填すれば良い、と言う案が検討されている。島田市の市長などはそれで解決すると楽観しているみたいだが、そもそも「工事で失われた水」の量をどうやって測るのか、具体策が示されていない。また、その量が田代ダムの取水量を越えたらどうするのかも。つまり、現段階では「こうすれば上手く行くんでは?」という段階で、確実な見通しは得られていないのだ。こうした「不都合な真実」をマスコミは伝えていない。

4)宇宙開発批判:これまたマスコミは「夢だロマンだ」と囃し立てるが、そもそもロケット技術というのは、ミサイル開発とともに進められてきた立派な軍事技術だ。各種の衛星と言うのも、基本的には偵察(スパイ)用が主目的であって、その副産物として資源探査や通信補助その他、民生用の利用がある。つまり、宇宙開発というのは、基本的に軍事利用がメインなのだ。この点は、月や火星・小惑星探査などでも同じだ。

実際に役立っている宇宙技術は、全部無人機で行っていて、生身の人間はほとんど役に立っていないことにも注意すべきだ。アポロ宇宙船で月に降り立った飛行士が、何をやったか思い出すが良い。単に、その辺を歩き回って足跡をつけ、米国の旗を立てて帰ってきただけだ。つまり、エベレスト登頂とかと大差はない。「行くこと」だけに意義がある。ただ、それだけ。

今、地球の周りを回っている宇宙ステーションにいる飛行士たちだって、何かの実験をやったりはしているが、そんなのは今ならロボットでやれるものが多いはずだ。AI技術が相当に進歩してきたので、人間がわざわざ宇宙に行かなくとも、大抵の任務は果たせる。無人機になれば、装備はグンと簡単になり、経費も安くなる。人間が宇宙空間で生きて行くのは、恐ろしく大変なので。これからは無人機の時代だ。宇宙飛行士を英雄視するのは、もう止める方が良い。そして、宇宙開発とは常に「スターウォーズ」と隣り合わせであることも忘れるべきでない。