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最近の統計では日本のGDPが2四半期連続でマイナス成長になり、日本経済が不況であることが確認された。不況は経済活動の衰退だから、それなら株安になるのが当然のはずだが、実際には日本の株価は上昇し、ついに史上最高値を更新して4万円台にまで達した。

また一方で、春闘の交渉では経営側からの「満額」回答が頻出し、賃上げブームが高まっている。マスコミ等では、これから賃上げ→購買力増加→消費増=景気回復→物価上昇 の好循環が始まると盛んに囃し立てている。果たして、そんなに上手く行く話なのか・・?

一つの疑問は、賃上げされているのは大手の上場企業正社員ばかりで、中小企業や非正規雇用の賃金も同様に上がるのか、不透明な点だ。現在の日本では労働者の多くが非正規雇用だから、彼らの賃金が上がらないと全体的な底上げにはならない。大手正社員との格差が拡がるだけでは解決にならない。

また、多少の賃上げがあったとしても、それを上回る増税社会保険料の値上げがあると、そんな分は吹っ飛んでしまう心配もある。実際、森永氏の本によると、日本の勤労者の国民負担率は50%に届きそうな水準で、むろん国際的にもトップクラスだ。北欧などでこれより負担率が高い国もあるが、それらの国では国公立大学の授業料がタダとか、各種の手厚い保護がある。いわゆる「高負担・高福祉」が実現されている。しかし日本はその逆で「高負担・低福祉」の典型なのだ。この点に関し、国民はもっと文句を言うべきだ。それが為されないのは、森永氏の本がなかなか出版されなかったように、そういう現実を知らされていないことに大きな原因がある。国民は、まず事実を知らないと。

米国や日欧の株価は、昨年10月まで下落・横ばい傾向だったのに、その後は一転して上昇傾向になり、現在では日米ともに株価の最高値圏に到達している。そのためもあって、株に投資しろとの声がしきりに聞こえる。今、投資しない奴は大バカだと言わんばかりの論説もある。

しかし、投資で儲けるのは、バクチと同様、一握りの幸運者だけだ。大部分は、負けてスッてしまう。大谷選手の水原通訳のように。実際、今の高値の株を買って儲かる確率は低いはずだ。安いうちに買って、高値になったら売るのが儲かる道なので。もう遅いわ。

さらに、これまでカネ集めのタネだっESGなど温暖化対策への投資話は、昨年後半から崩れている。再エネやEVのコスパが案外良くないことが明確化したからだ。人為的温暖化説がそもそもインチキなのだから、何を今さら、の感もあるけれど。排出権取引などは、本来的に詐欺に近いから、よほど間抜けでないと乗ってこない。そのため排出権の価格もCO2トン当り数千円程度で低迷している。それより高いと、誰も買わない。

要するに、新たな表向きの資金源やカネ集めの構図、成長要因がないのに、上記したように昨年10月以降から状況が変化したのだ。これは何故なのか?

考えられる一つの要因は、隠れた巨額の資金源がどこかにあって、そこから金融システムに資金が流入し、金利上昇の抑止や株高を演出しているのでは?と言う疑いだ。その主犯は、むろん米国の中央銀行=連銀だろう。そう考える理由は、リーマンショック以来、彼らはいわゆる金融緩和、つまりお札を大量に刷って金融システムに流し込むということをやって来たからだ。黒田の日銀もそうだった。植田総裁になって、ようやくマイナス金利などという異常事態の解消が行われたけど(ただし、今の状況でこの措置が真に良策だったかどうかには、議論がある)。

普通に考えたら、中央銀行がお札をバンバン刷って市場に流したらカネ余りになり、お金の価値が下がる、つまりインフレが起きてしまうはずだが、現実にはそうなっていない。今のところ、危機を先送りするために進められている裏資金注入は、上手く行っている。しかし、原理的に、いつまでも続くとは考えられない。どこかで破綻する。バブルがはじけるのだ。

取りあえず今年は米国で大統領選挙があるので、バイデン政権は金融システムの崩壊を防ぐために全力を尽くすだろうし、選挙後、新大統領も自分の代で金融崩壊を見るのはいやだから、何とか延命を図るだろう。問題は、それがいつまで続くかだ。現時点で、誰も正確に予測できてはいないようだが。

経済統計の数字などを見る限り、米欧日の実体経済は、不況とインフレの両方が悪化する「スタグフレーション」状態にあると見るのが冷静な見方だと思う。賃上げや株価・債券等の上昇で景気が良いなどと楽観するのは愚かしい。多くの人が騙されてそれを軽信していると思うが、現実は着々と進んで行く。

今、世界的な実体経済の中心は、資源を豊富に持つBRICSなど非米諸国に移りつつある。日本など米欧側の人間には、その実態がよく見えないでいるが、いずれ誰に目にも明らかになるはずだ。