国際社会を見る目 続き

ウクライナ戦争をきっかけに、世界は英米側(日欧NATO・G7豪州NZなど、多くは「先進国」)と、中露を中心とする非米側にはっきりと分かれてきた。日本人の多くは、G7など先進諸国が国際社会の中心だと思っているかも知れないが、現実は違う。国連の加盟国数だけで見ても、非米側が多い。しかも、中露を中心とするBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南ア)に、中東各国やアフリカ諸国などが集まりつつある。8月末に開かれたBRICSサミットの顔ぶれを見たら良い。今回は南ア開催なので、アフリカの全ての国の指導者が招待された。

実は、フランスのマクロンは、ウクライナ戦争の形勢芳しからざるを見て、ちゃっかりと、このBRICSサミットに参加を希望した。しかし、米国に妨害されロシアにも容認されず、結局招待されなかった。マクロンは時々英米側としては例外的に非米側に秋波を送ったりして、そのたびに米国から妨害されて頓挫したり国際的な赤恥をかかされている。それでも健気に頑張るのは、彼なりにフランスの将来を案じているからだろう。そんな考えも度胸もない日本の指導者より、よほどマシである。ましてや「戦う覚悟」などを強調する暴言政治家などよりは。

今回のRRICSサミットで、サウジ、UAE、イランなど6カ国が新規加盟を果たした。これで世界の石油輸出の39%、石油埋蔵量の46%、産油量の48%がBRICS側になった。エジプトとエチオピアも入ったので、アフリカと中東情勢は、今後、BRICS主導で進んで行くはずだ。イスラエルもこのままでは立ちゆかず、ロシア仲介の下にアラブ諸国との宥和を図る方向に進む。全体として、英米軍産がアフリカ・中東・中央アジア等で引き起こしてきた争乱・紛争は、中露主体のBRICSが解決、安定化に向かう。その結果、これらの諸国は経済発展が期待できる。資源が豊かで、人口構成も全体に若く、カネしか持たず高齢化の進むG7など米側と対照的である。日本も、もっとBRICSに近づく努力をすべきだ。たとえ米国が妨害や意地悪をするとしても。日本のマスコミ報道だと、中露は種々の困難に遭い、自滅への道を歩んでいるかのようだが、現実はどうやら違うようだから。

今回のウクライナ戦争も、元々は2014年に米国が政権転覆によってウクライナを傀儡化してロシア敵視国に転換し、対抗策としてロシアがクリミアを併合した頃からの流れを見なければならない。英米軍産が(米傀儡の)ウクライナ政府をけしかけ、ウクライナ東部(ドンバス)のロシア系住民への弾圧や虐殺を続けたため、プーチンのロシアを怒らせた。その後、ドイツのメルケルが奮闘して、2014年にドンバスの停戦と自治を定めた「ミンクス合意」にまで何とかこぎ着けた。しかしその後まもなく、英米軍産とウクライナがこれを破った上に、NATO加盟まで画策するに至り、ロシアの堪忍袋も限界に達して今回の侵攻となった。

実際、プーチンのロシアは「ウクライナ政府がミンクス合意を守り、ロシア系の自治を認めて対話してくれたら平和が戻る」と言い続けている。これが正しい解決策だ。英米の現実派や独仏はそれを知っているのに、軍産がそれを許さない。トランプとプーチンは話し合いができたが、バイデンになって全くダメになった。現在ウクライナが国連などに出している「和平案」をロシアが突っぱねる理由・背景も、これで明らかだ。

この種の話も、大手マスコミには全然出てこない。日本のまともな元外交官たち(浅井基文、田中均佐藤優東郷和彦、孫崎亨ら)も、上記の認識を共通に持っている。それは当たり前の話で、上記は歴史的・客観的な事実だからだ。日本人の多くが知らないだけで。

従って、今回のウクライナ戦争に関して、一方的にロシアだけを非難するのは正しくないと思う。先に手を出したのはロシアだが、これはバイデンらの仕掛けた罠でもあったから(自滅的な罠だったけど)。日本が率先してやるべきことは、ロシア・ウクライナ両者に対して、まずは停戦、次に話し合うことを強力に奨めることであって、武器やその他の物資をウクライナに送って戦争を煽ることではないはずだ。しかし日本国内では、大多数がマスコミに洗脳されてしまって、この種の冷静・合理的な議論が出てこない。実に嘆かわしい事態であると思う。

私自身は透析患者の隠居老人であり、無名無力な存在ではあるが、残り少ない余生でもなるべく多くの場で発言し、多くの日本人に「自分の目で見て自分の頭で考えろ!!」と言い続けたい。