スポーツ観戦の愉しみ

まずは女子サッカー皇后杯の感想から。皇后杯の準決勝と決勝の3試合を見た。それぞれ大熱戦で面白かった。以下、順に感想を記す。

準決勝1:浦和 vs 広島

前半は明らかに浦和ペース。前半で2点取って優勢に。特に2点目の猶本のスーパーゴールはお見事。しかし、要の猶本が負傷交代した後から浦和は勢いをなくし、広島攻勢に。そして遂に後半だけで2点入れて延長戦に。その勢いで延長前半に1点入れ、このまま逃げ切るかと思われたが、延長後半に浦和の清家が値千金の同点ゴールを決め、結局はpk戦に。広島にも惜しい場面はあったが決めきれず、後半5分頃からプレーが消極的になったように見えた。まだ10分以上あるのに、もう時間稼ぎかい・・と見ていたら、案の定、同点にされてしまった。

ああ言う場面の試合運びは実に難しい。失点は避けたいが、下手に守りに入ると却って危険度が増す。攻撃こそ最大の防御とは言うが、実際には失点したくない心理が強く働く。特に、あのような一発トーナメントでは。

pk戦は結局、浦和のキーパーが後ろの二人を止めて4-2で浦和の勝ち。追いついた方に勢いがあると言う一般法則が、ここでも成立した。

準決勝2:神戸 vs 埼玉

前半は、埼玉が押し気味だった。神戸は中盤がいまいちパッとせず、埼玉の攻勢にさらされた。しかし前半39分にFW田中美南が少ないチャンスをものにして先制。後半も一進一退、神戸は左サイドの北川ひかると前線の田中しか目立たない感じ。埼玉は揺さぶったあげく、53分に吉田が鮮やかなゴール。崩しも見事で完璧。その後1点ずつ取り合って、こちらも延長戦に。延長後半の終わり間際に、北川の放り込んだ球がそのままゴールインして、これが決勝点。埼玉が勝ってもおかしくない試合だったが、神戸の勝ちたい気持ちが優ったと言うべきか。

決勝:神戸 vs 浦和 

試合自体は、終始浦和ペースだったと言える。浦和が90分で勝って何の不思議もない試合だった。しかし勝負は水物。結果は違った。

前半は完全に浦和ペース。時間の大半を神戸陣内で過ごしていた。神戸の失点シーンも、中盤でボランチが球を失ってショートカウンターを食らい、クロスがDFに当たって結果的にはオウンゴールになったが、そのまま普通に失点しても不思議はなかった。神戸は、杉田・中島・伊藤らが抜けて中盤力が明らかに落ちていると思う。守屋・土光・三宅らのDF陣の頑張りと、トップの田中、左の北川など、代表経験者の働きで何とか決勝まで来た感じ。今後の課題は、中盤の強化だろう。今度、藤枝順心高からU-17代表・久保田真央などが入るから、楽しみはあるが。

一方浦和は、猶本・髙橋・石川・清家・塩越などの現役代表組に、安藤・菅澤・柴田・池田などの元代表組が集まるスター軍団と言って良く、実力的には明らかにトップクラス。その中で私は、柴田華絵を評価している。メンバーが種々入れ替わる中で、長く浦和を支えてきた。豊富な運動量で、献身的に働く。派手さはないが、もっと評価されて良い選手だと思う。代表にはあまり呼ばれていないが、この点は男子のジュビロ藤田俊哉に似ている。同年代の中盤にタレントが揃いすぎていて、割を食った格好なのだ。

それで、試合は猶本・安藤を欠いても浦和が終始押し気味で、このまま1-0で終わるかと思われたが、神戸が終了間際、怒涛の攻撃を見せ、最後に田中のシュートを手で止めた石川のファールでpkになった。VAR判定したら、石川は一発レッドでもおかしくなかった。そのまま行けばゴールしていたボールを、明らかに手で止めているから(得点機会の阻止)。

pkはベテラン高瀬が蹴った。外したらハイそれまでの、恐ろしいプレッシャーに曝されながら、よく決めたものだ。これで同点になり、延長戦に。ここからが、また面白かった。見どころ満載の延長戦だった。神戸は交代で入った15番井手と20番桑原の働きが良く、チャンスは神戸の方が多かった。10番成宮のクロスバー直撃弾や、終わり間際の北川のヘディングなど。あれは完全に決まっていたはずの球で、キーパーはノーチャンスだったのだが。

浦和にも清家のキーパーと1対1などのチャンスはあったが決めきれず。終わり間際に柴田に大チャンスがあったが、北川の身を挺してのスライディングで防がれた。

そして結局この試合もpk戦になり、7人目まで行って5-6で神戸が勝った。このpk戦も、ゴールポストに当たる球が幾つかあって、入るのと外れるので運命が分かれた。勝負の女神は気まぐれなのだ。

準決勝・決勝の3試合とも延長戦、2試合がpk戦と言う実力伯仲の4チームで、どの試合も見応えがあった。これに日テレや新潟・千葉・仙台なども割り込んでくるから、WEリーグはさらに面白くなる。海外組も充実しているので、日本女子サッカーの未来は明るい。

全日本卓球選手権の感想も書いておこう。準決勝以降は見応えのある試合が多かったが、女子は早田ひなが断トツに強く、準々決勝以降全部4-0で勝ち、競り合いはなかった。早田に迫るシングルスがいないと寂しい。これに対し男子は見応え十分の試合が多かった。準決勝でさえ、戸上吉村はフルセットの大接戦。最後は戸上が振り切ったが、凄い試合だった。もう一つの張本篠塚はフルゲームにはならなかったが、凄まじい打ち合いが何回もあり見ていて面白かった。戸上は、この準決でかなり疲労があったと思う。これが決勝の伏線。

男子単決勝は、歴史に残る大熱戦だった。3-3まで行き、10-10から延長戦になり、最後16-14で張本が競り勝ったが、それまでにマッチポイントを8回もしのいだ末の勝利だった。何とも凄い精神力というか集中力というか・・。終わった瞬間、張本は喜ぶことも出来ず、茫然としていた。それ程までにプレーに集中していたと言う意味だろう。いやあ、凄いものを見せて貰った。感動の一語!