ラグビー後語

ラグビーW杯は終わってしまったが、私は録画した試合を見返している。見返すに値する試合が多かったと感じているからだ。予選リーグでも仏vsNZ、南アvsアイルランドのような大熱戦もあったが、やはり決勝トーナメントの各試合が素晴らしい。結果的には南ア、NZ、イングランド、アルゼンチンの順位になったが、ベスト8敗退の仏とアイルランドは、力量的にはベスト4以上だったと思う。

準々決勝のNZvsアイルランドは接戦で、最後に猛攻をしかけたアイルランドをNZが頑強に凌ぎ、フェーズ数が36にもなる激戦で、もはや見とれるしかない戦いだった。片や準決勝のNZvsアルゼンチンは大差のゲーム。これを見てもアイルランドがアルゼンチンより強いのは明らかだ。

仏vs南アも凄まじい試合だった。準々決勝のNZvsアイルランドと仏vs南アの2試合は、決勝戦と言っても過言でない内容だった。実際、決勝は南アvsNZで、これも大接戦だったわけだから、これら4チームにはほとんど差が無く、今大会ベスト4と言うのがふさわしいと思う。

南アは決勝トーナメントの3試合、全部1点差で勝ち抜くと言う奇跡的な偉業を達成した。この勝負強さには頭が下がる。全員攻撃全員守備の典型みたいなチームだった。

この4チームは、それぞれ魅力があった。堅い守備力はどのチームも共通しているが、攻撃の仕方は各チームそれぞれ特色あり。華やかな攻撃は、NZ、仏、アイルランドで、優勝した南アはむしろ地味な印象がある。ポラードのキックで稼ぎ、あとは堅い守備で凌いだ。ウイングのコルビの活躍もあったけど、コルビは守備でも貢献が大きかった。失点の危機をギリギリで何度も救っている。FWでは4番のエツベスが印象的。決勝で最後に決めたトライは2~3人くらいを引きずりながらゴールに突進して決めた。重戦車みたいだった。南アの4番と7番は守備でも貢献度が高かったと思う。NZでも4番と7番が目立っていた。

準々決勝の残り2試合、ウェールズvsアルゼンチン、イングランドvsフィジーもそれぞれ面白かった。ウェールズvsアルゼンチンは大接戦で、後半ウェールズが逆転し、2点差で勝っていたのに、残り3分くらいでパスをサッとかっさらわれて、ど真ん中にトライされて大逆転。最後にPGも決められて最終的には点差が開いたけれど、終わる直前までどうなるか分からない試合だった。あんなに鮮やかなパスのインターセプトは滅多に見られない。特にW杯クラスでは。あれをやられた選手は、一生忘れられないだろう。ウェールズの同僚選手が、その失敗した選手をすぐ慰めていたシーンが印象に残る。実力的には、ウェールズの俊敏さが上のように見えていた試合だった。

イングランドvsフィジーも熱い試合で、前に書いた通りだが、後半のフィジーの追い上げは凄まじく、フィジー強しを印象づけた。イングランドはFW戦中心でキックを多用するせいか、あまり「見映え」はしないスタイルだと思う。強いとは思うが、NZ、仏、アイルランドのような華麗さはない。見ていてワクワクするのは、これら3チームだ。

こうして見ると、日本ラグビーの課題は多い。まずは各プレーの精度と確度を上げる必要がある。上位チームは、ミスと反則が少ない。フェーズ数が20を越えるシーンが幾つもあるが、それだけミスも反則もないという意味だ。それに比して、日本は細かなミスが目立つ。ノックオンが多いのはその証拠。プレースキックの松田は良かったが、プレー中のキックはまだ精度が低い。南アやNZは、動きながらのキックが非常に正確で、戦法的に有効だった。

また、選手層を厚くすることも必須だ。強いチームは、控え選手層が厚い。後から後から凄い選手が出てくる。今回の日本は、最初が最強で、代えるたびに少しずつ戦闘力が落ちた印象がある。だから、後半に突き放される展開が多かった。

もうすぐ、国内リーグも始まる。W杯で活躍した選手がたくさん加入してくれたことは喜ばしい。決勝の2チーム、南アとNZから10数人が来る。W杯で見なれた顔が日本でも見られることは素晴らしい。Jリーグがそうだったように、ラグビーも国内レベルが格段に上がることを期待する。