ドビュッシーその他のこと

ドビュッシー前奏曲集第2巻を聴いていると、突然「うさぎ 追いし かの山~」が聞こえてくるような気がすることがある。第9曲「ピクウィック卿をたたえて」という曲だ。あれにはいつも驚く。ドビュッシー前奏曲集は第1巻と第2巻があり、私はどちらかと言えば第1巻に惹かれる。第8曲「亜麻色の髪の乙女」が有名だが、第7曲「西風のみたもの」、第10曲「沈める寺」などは文句ない名曲だ。これに比べると第2巻は、もはや現代音楽と言って良く、楽想の掴みにくい曲が多いので、ややとっつきにくい。しかし元々、ドビュッシーの音楽は、旋律を追いかけるより響きを愉しむものだと、私は思う。ピアノ作品では、特にそうだ。

ドビュッシーを弾くピアニストでは、やはりミケランジェリがお師匠格で、CDもたくさんある。録音は古くても、彼の明確・硬質なタッチは、しっかり聞こえる。彼の弟子に当たる、CD数は少ないがポリーニドビュッシーは、いずれも名盤だ。前奏曲集第2巻のCDでは、彼の息子と共演している興味深い場面がある。全集は、明晰な音のベロフで聴く。響きが美しい。

私はフランス音楽をそれほど好んで聴かないが、ドビュッシーは例外的に好きだ。特にピアノ作品。あとはフォレの室内楽程度。ただし彼のピアノ作品にはあまり惹かれない。また、ヴァイオリン・ソナタピアノ五重奏曲などは良いのだが、彼の唯一の弦楽四重奏曲は、まだ理解したとは言い難い。どう見ても、非常に渋い。音の動きが追跡できないのだ。もっと聞き込めば、何かが見えてくるかも知れないが。あとフランクは、唯一のヴァイオリンソナタだけを主に聴く。他は、ラヴェル、ミヨーとかその他、ほとんど心惹かれない。

ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲第11番の中に「この子の七つのお祝いに~」と聞こえてくる部分がある。これも聴いていてギョッとする。初めて聴いたのはVogler Quatettと言う楽団のCDで、私はこの演奏に強く惹かれたのだった。このCDには、ドビュッシーの弦四も入っていた。この楽団のCDではブラームスシューマンの3曲ずつをカップリングした3枚があり、いずれも名曲の名演で、私の愛聴盤の一つになっている。この楽団は、アルバンベルクQr.以降の、世界をリードする実力を備えたカルテットに見えていたが、なぜかその後の消息が今一つはっきりしないのが残念だ。一度だけライブを聴いたことがあり、とても良かったことを記憶している。

メロディーが似ていると言えば、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」の主旋律が「上を向いて歩こう」にソックリなのは有名で、他にはブラームス交響曲第1番の終楽章のメインテーマが例の「喜びの歌」に似ている例がある。しかしこれは、ベートーヴェンの後を追いかけたブラームス長年の執念の結実なので、真似どうのこうのとケチなことは言うまい。

ブラームス交響曲は4曲とも名作で、昔から何度も聴いた。最初に聴いたのは京都の学生時代で、学生オケの演奏で第2番を聞き、感銘を受けたのを覚えている。ブラームスは色んなオケが取り上げるので、全4曲ともライブで聴いた。今一番良く聴くのは、第4番かな。

これに対し、ブルックナーはライブは第7番と第8番しか聴いた記憶がない。CDでは浴びるほど聴いたけれど。今の望みは、第9番を、上手いオケで聴きたいものだ。あの曲は、実際には相当難しそうだから。下手するとムード音楽になってしまう。第9番の末尾、ホルン殺しと呼ばれる、あの長く続く音で静かに終わるあの曲は、実に素晴らしい。