COP28終わる 科学と政治の諸問題

UAEのドバイで開かれていたCOP28が、1日延長されて13日に終わった。合意文書には、2030年までに対策を加速し「化石燃料から脱却する」ことが明記された。具体的な対策として、30年までに再生可能エネルギーの設備容量を3倍に、エネルギー効率を2倍に、温室効果ガスを35年に19年比で60%減らす、化石燃料代替として原子力を推進する、などが合意された。

合意文書をまとめたUAEの議長は「歴史的な偉業を誇りに思う」と自画自賛した。新聞解説でも「気候変動の根本原因である化石燃料からの大きな転換を告げるもので、決定的に重要な瞬間だ」などとある。

しかし、本当にそうなかあ・・?私の考えでは、全然そうではないけどな。

第一に、合意文書の「脱却 transition down」は「削減 phase down」よりは強い表現だが、当初案にあった「廃止 phase out」よりは弱い。石炭火力に多くを依存するインドや中国その他の諸国が「廃止」に強く反対したからだ。「この10年(2030年まで)に行動を加速させる」とも明記してはいるが、具体策は何もない。「歴史的合意」などと持ち上げても、所詮は強制力がないから、実質的な効力は何も無い。

第二に、再生可能エネルギーの設備容量を3倍に、エネルギー効率を2倍に、温室効果ガスを35年に19年比で60%減らすと言っても、具体的にどうやって推進するのか、それに要する費用負担をどうするのか等々は何も示されていない。各国に「お任せ」の状態だ。つまり、これまでと同様、単に目標を掲げただけに過ぎず、実効性が全然ない。いつも通りの「錦の御旗」に過ぎない。まあこの会議は、いつものことだが「みんなで頑張ろうね!」と言い合ってシャンシャンと平和裏に終わるのが使命みたいなものなので、合意文書ができたこと自体で満足なんだろう。

第三に、原子力の推進、と言うのが怪しい。以前から、原子力業界は「CO2を出さない原子力」というのを売りにしていたが、ここに来ていよいよ本音を表してきたか、の感がある。将来世代の大きな負担になる「核のゴミ」を残す原子力の方が、CO2を出す化石燃料より宜しいとする根拠が、私には理解できない。そんなはずないよ、絶対に。

お金だけの問題でも、先進国から途上国に具体的にいくら支払われるのか、報道では分からない。そもそも、この会議で実際に流れたお金って、いくらあるのやら。

まして言わんや、この会議では温暖化に関わる科学的な議論がなされることは一切ない。人類発のCO2が増えて温暖化→異常気象→気候変動の原因だと決めつけているからだ。しかしそうだとしても、いやそうであるなら尚更、各国別にCO2排出削減量を具体的に振り分けるべきだろうに。しかしCOPでCO2削減量を具体的に決めた例は全くない。

つまりここでは、地球温暖化のような問題でさえも、科学ではなく政治・経済の問題と化してしまっている。

ただし、私に言わせれば「気候変動の根本原因である化石燃料」という考え方自体が間違っている。科学が明らかにした地球上のCO2収支から考えて、たとえ人類が化石燃料を全廃しても、毎年約2ppmずつ変化している大気中CO2濃度はせいぜい0.1ppm程度しか変わらないはずだからだ。

また日本では、地球温暖化・脱炭素に関して、政治の力で、自由な言論が封じられていると私は思う。なにしろ国連や政府の公式見解なので、マスコミが全部従い、多くの学者や論者もそれに従っているからだ。異論は、最初から封じられているか、無視される。

科学が政治に歪められたケースは、地球温暖化問題だけではない。中世キリスト教会が天動説しか認めず地動説を唱える学者を弾圧した例に限らず、日本でも明治時代に、海軍で脚気を皆無にしてみせた高木兼寬の功績を、陸軍の森鷗外や東大医学部が断固として認めず、確証も示せないのに細菌原因説にしがみついた例などがある。高木には、確かに脚気の原因を特定できないという弱点はあったが、それまで猖獗を極めていた脚気を、実際の現場で皆無にして見せたのだ。これに対して、森鷗外らの陸軍では、白米に固執したため脚気を全く防げず、末端の現場では麦飯の使用で脚気を防止するという海軍の手法を取り入れた所さえあった。陸軍上層部は、その措置をも禁止するという徹底ぶりだった。あくまでも面子にこだわったからだ。この石頭ぶりは、凄い。私の見るところ、この「石頭」は伝統として今に生きている。

最近の事件では、コロナワクチンの問題点を指摘した宮沢・京大医学部准教授が雇用契約解除されることになったり、放射線被曝評価、特に内部被曝に関しても、政治的な圧力で科学的な真実が隠されているフシがある。例えばトリチウム放射線危険性が小さいというのは、身体の外からの放射が簡単に防御できるからであって、身体に取り込まれて細胞内で放射線が直撃する場合は、その危険度は桁違いに大きくなるはずだ。これを正確に正直に評価した国際文書は、どこにあるのだろうか?専門家の教えを乞いたい。