COPの茶番劇

12月19日の「アゴラ」で、キャノングローバル戦略研究所の杉山大志氏が、COP28の合意文書の原文を示して、その茶番劇ぶりを暴露している(https://agora-web.jp/archives/231218073137.html)。

それによると、そもそも「化石燃料からの脱却を進める」で合意、というのが不正確な訳なのだ。これだと参加国が全部「合意した」かのように読める。しかし正確には「COP28が参加国に化石燃料からの移行を呼びかけた」が正しい訳である。つまり、参加国はどこでも「呼びかけられた」だけで、「脱却に合意」などしていない。締約国の義務などは何もないのだ。

しかも、具体策を決めるのは各国に任されていて、罰則などは存在しないから、各国が何をしようが平気である。だから、中国もインドもブラジルも、今回の合意によって何か化石燃料に関する行動を変える必要ななく、実際に、何ら変更などしないだろう。

こうしてみると、NHKその他の大手マスコミ報道を鵜呑みするのはやはり危険で、少々面倒でも英語の原文に当たってみなければならないことが良く分かる。

その他に、杉山氏は重要な指摘をしている。以下、引用する。

「その一方で、今回の合意で、全く報道されていないことがある。

開発途上国側は、先進国の支援を脱炭素の前提としている。その勘定書きはどんどんエスカレートしている。今回の合意文書にも、2030年までには年間約1兆ドル(正確な文言は米ドルで2030年までの累積で5.8-5.9兆ドル)、2050年までには年間5兆ドルが必要だ、と書きこまれている:

1兆ドルの1割を日本が支払うとしたら、150兆円の1割だから年間15兆円だ。こんな法外な金額は絶対に払えない。だがそうなると、途上国は、2030年の約束を守らなくてよいことになる。毎年恒例のCOPは、壮大な茶番劇になっている。」

ここでも、「必要だ」とは書かれているが、2030年までに年間約1兆ドルの支援が要るとして、どの国がいつまでにいくら支払うかは、何も決まっていないことに注意しよう。つまりはこんな文言は、空証文に過ぎない。まあ、空証文だからこそ各国とも涼しい顔をしてやり過ごせる訳だけど。もしも、拘束力のある資金割り当てが決まるとなれば、各国とも必死に自国の支援額を引き下げようと、文字通り血みどろの闘いになるはずだ。万が一変な金額を押しつけられて受け入れたら、帰ってから袋叩きに遭うことは避けられないから。世が世なら、責任とって腹を切れ・・なんて。

故に、毎年、世界各国から多数が集まって1週間以上を過ごし、閣僚級協議だの首脳レベル協議だの散々やった末に「合意」という名の「呼びかけ」で終わるのは、そのためだ。実際問題、こんな支援額に関して、「本物の合意」など永久に出来っこない。

こんな茶番劇を、いつまで続けるつもりなのか?日本はそろそろ「毎年化石賞貰っているし、そろそろ離脱します」と言っても良いのではないのかな?