「人為的CO2排出量は大気中CO2濃度変化に影響しない」という論文
知人で在野の研究者である阿藤大氏の論文が、あれこれ紆余曲折の末、遂に公表された(https://scienceofclimatechange.org/dai-ato-the-sea-surface-temperature-rules/)。
紆余曲折と言うのは、論文が学術誌に掲載されるまでに、拒否されたり変な言いがかりを付けられたりで、ずいぶん時間がかかったからだ。これは彼に限ったことでなく、いわゆる人為的温暖化説に懐疑的ないし否定的な論文が、いつものように出会っている出来事である。公式な和訳は(https://note.com/atodai2021note/n/n3d3ec78f25ca)で読めるが、下記のようになっている。以下、表題と要旨のみ記す。
多変量解析は「大気中CO2増加は人類起源」の理論を棄却する:海表面温度が支配する
阿藤大、独立した研究者、大阪、日本
要旨
大気中CO2濃度の変動に対する確実な因子の影響度は、明確にはされていない。特に海表面温度(SST)による大気中へのCO2の放出及び吸収の影響度と、人類による化石燃料使用による影響度の徹底的な比較はなされていない。当研究では、各々の影響度を多変量解析により検討した。世界の著名な気候調査機関およびエネルギー関連機関より、一般公開されているデータを用いた。各年度の大気中CO2増減値を目的変数とする、線形重回帰分析を行った。各年度のSSTと排出量を説明因子とした。1959年以降において、NASA由来のSSTを用いた回帰モデルが、年間CO2増加値を最も良好に予測した(回帰係数B=2.406、P<0.0002、Model R2=0.663、P<7e-15)。しかしながら、人類の排出量はどの回帰モデルにおいても、決定因子とはならなかった。更には、英国HADLEYセンター由来のSSTより得られた回帰式により予測した1960年以降の大気中CO2濃度は、実際のCO2濃度と極めて高い相関を示した(ピアソン相関係数 r=0.9995、P<3e-92)。2022年度での誤差は1.45ppmであった。結論を述べる。当研究は大気中CO2濃度の年間増加値の独立規定因子がSSTである事を、重回帰分析により証明した初めての研究である。そしてそれは強力な予測能を示した。一方、人類のCO2排出は無関係であった。この結果は、大気中CO2が自然現象として変動する事を証明している、人類の活動とは無関係にである。
学術論文なので厳密を期すため少し難しい表現になっているが、要するに、大気中CO2濃度変化に強く影響している因子は海洋表面温度(SST)であって、人間活動から排出されるCO2は殆ど効いていない、と言う研究結果である。
これは、世の中に広まっている「人為的温暖化説」を根本から否定する内容だ。何しろ、世の中では「人間が出すCO2が大気中CO2濃度を上げて、それが地球温暖化の原因だ」と言う説が主流なので。論文は、この説前段の「人間が出すCO2が大気中CO2濃度を上げて」がウソだと言っているわけ。
多くの人は驚くだろうが、実は実質的に同じ内容を私は21年4月のエントロピー学会の論文で主張していた。詳しくはアゴラに書いた(https://agora-web.jp/archives/240806054159.html)。私の主張は、人類起源CO2は自然界で循環している量の5%に満たないので、毎年の大気中CO2濃度変化約2ppmの高々5%、つまり0.1ppm程度しか占めていないだろうと言う内容だった。だから、人類がCO2排出を全部止めても大気中CO2濃度変化は0.1ppm程度しかなく、脱炭素などやっても効き目はないのだと。
この主張は、地球上のCO2収支の分析から導いたことだが、今回の阿藤論文は、大気中CO2濃度変化の観測データと人為的排出量やSSTの変動がどの程度相関しているかを調べたもの。つまり実観測データの分析から得られている。全く違うアプローチで、同じ結論が出たわけだ。真実は一つなので、当たり前ではあるのだが。
もっとも、SSTが大気中CO2濃度変化に効くというのは、ある意味当然の話だ。一般に、液体に対する気体の溶解度は、温度が上がると下がる、つまり温度が上がると液体から気体が追い出されるから(ヘリウムのように、溶解度が温度でほぼ変わらない気体も中にはあるが)。だから海水温が上がると接している大気の温度も上がり、同時に溶けていたCO2が大気中に出て濃度を上げる。つまり海水温→気温→CO2濃度の変化が順に起きる。故にこれらは時間的なズレを伴いながら綺麗に相関する。科学的には何の不思議もない。実際、気温→CO2濃度変化が相関するとの指摘は、かなり前からあった。
この論文は、英語圏では注目されて論争のタネになるはずだ。日本でもいずれ注目されるはずだが、そのきっかけとしてアゴラに紹介して世に知らしめようと思う。「脱炭素」を唱えている奴らに冷や水浴びせかけるのだ。あんたらの試みは何の効力もないんだよ、と。